2020年5月6日水曜日

視覚障害者に対するオンラインイベントの3つのアプローチ

皆様


viwaの谷田です。

ここ1か月で視覚障害当事者の中でも、オンラインツールが多用されています。
今回、私が関わり、活用した3つのオンラインツールについてご紹介します。

1.背景
 コロナによる自粛生活の影響で視覚障害者は孤立した生活を余儀なくされている。例えば、公共施設が閉鎖され、また同行援護も受けづらく、さらに職場へ出勤することさえも制限されている。
 そこでインターネットを活用した視覚障害者の「孤立をなくす」取り組みができないかと考えた。


2.方法
2-1.既存の方法
 すでにインターネットは視覚障害者のコミュニケーションに活用されている。例えば、メールやSNSである。
 メールは生活訓練でも取り入れられ、視覚障害者もサポート側も多くいるようである。
 LINEやFacebookメッセンジャーの利用者は多いが、画面を読み上げるスクリーンリーダーを用いての操作方法を示したドキュメントが公知されておらず、サポートできる人も限られている。ただし、視覚障害者は独学でSNSを使いこなせている人が多いようだ。

2-2.ツール検討
 オンラインイベントを行う上でのツールの特性を調査した。

・LINE
最大接続数:200人
主催者はあらかじめグループを作成する。
参加者は普段LINEでメッセージをやり取りしている人であれば、比較的簡単なフォローで接続できる。

・Skype
最大接続数:25人
主催者は"meet now"機能でURLを作成し配布する。
参加者はURLをタップするだけで参加することができる。普段やり取りをしていない人も参加しやすい。

・Zoom
最大接続数:100人
主催者はURLを生成し配布する。有料アカウントでないと40分で通話が終了してしまう。
参加者はURLをタップするだけで参加することができる。有料アカウントでなくても参加側はOK。
Skypeに比べ多機能で、例えば主催者から参加者全員をミュートにすることもできる。
ただし、LINEで参加用のURLをクリックしてもzoomを開くことができない場合が多い。zoomのURLを送るときは、LINEよりメールのほうがよい。

2-3.アプローチ
 背景やツール、イベントの規模などから3つのアプローチを提案した。
(1)コミュニティ型
ツール:LINE
規模:10名まで
※以前より顔見知りのメンバー
※LINE IDを参加者同士が知ることになるため、知り合い同士の利用に適している。

(2)ディスカッション型
ツール:Skype (meet now機能)
規模:5名程度
※新しく出会うメンバー
※URLをクリックするだけなので、事前にSkypeIDを交換する必要はない。
※Skypeのアプリが入っていなくても参加することができる。

(3)ウェビナー型
ツール:zoom
規模:100名まで
※不特定多数。
※個人情報は主催者にしか閲覧できない。
※有料アカウントの場合、複数人が主催者としての権限をもつことができる。
※有料アカウントの場合、録画ができる。

3.実施報告
 ここでは3つのアプローチについて実施した内容を報告する。

(1)コミュニティ型
 10名程度で毎月定例会を行っていた視覚障害者団体に対し、LINEでのオンライン定例会を開催した。
 以前からLINEでのメッセージのやり取りがあり、比較的スムーズにLINEグループを作成することができた。フォローも特にしなかったが、接続することができた。
 特に進行役も立てなかったが、普段から発言が少ない人をフォローする習慣があるため、オンラインになったからと言って不自由はないようであった。
 ただし、途中で参加した人が気づかれないケースもあり、参加者に声を出す勇気が求められる。

(2)ディスカッション型
 SNSなどで告知し普段知り合いでない方を5名集めディスカッションを行った。
 Skypeのmeet now機能を使えば、簡単に会議開催用のURLが作れる。普段LINEを使っていない参加者でも参加できる。
 進行役を立て、基本的に進行役があててから話してもらう形とした。参加者の中には話が長い方もいたが、進行役の技量でディスカッションが滞らないようにできた。
 人数は5人程度がよい。それ以上になると進行役が把握しきれず、発言できない人や疎外感を感じる人が出てくる。

(3)ウェビナー型
 SNSやメーリングリストで広く公募し、不特定多数のメンバーが参加した。
 不特定多数であるため雑音の問題があった。少人数では雑音を指摘できるが、多人数では指摘が難しい。そこで「すべてミュート」機能があるzoomを使用することとした。
 スタッフとして司会、話題提供者、裏方(2名)の合計4名を配置した。開始時間から「すべてミュート」を行い司会と話題提供者のやり取りとした。
 質問がある場合、参加者から空メールを送っていただくようにし、裏方はメール受信したら司会に伝え、その後質問者のミュートを一時的に解除する形で行った。
 参加者の中には表示名が実名でない場合もあり、zoom内のリストから質問者を探し出すのは大変であった。
 視覚障害者の中では、zoomはまだなじみのないオンラインツールのため、ウェビナー開始1時間前から接続テストの時間を設けた。このとき、スクリーンリーダー同士が、操作に必要なショートカットキーの情報をやりとりしていて相乗効果が認められた。
 チャット機能については、voiceoverやPC-talker等でチャットが書き込まれるたびに読み上げられ、演者の音声が妨げられる可能性があったため、チャット機能の使用は控えてもらった。
 裏方スタッフは事前にLINEグループを作成した。質問メールをスタッフAが受け取り、それを直ちにLINEグループに転送することで、司会者Bは進行の段取りを、ミュート解除担当のスタッフCは次の発言者のミュート解除手続きを行うことができた。
 運営メンバーは全員、ロービジョン者であったが以上のような運営上の工夫を行うことで対応ができた。

4.まとめ
 アプローチを検討するうえで各ツールの機能を知ることが大切であった。独りですべての機能を熟知するのは困難で、機能を試すにも一人では試せない。チームでイベントをデザインしていくことが必要だと感じます。
 また、アプローチをシェアすることが大切だと思います。真似をしたり改善したり、知見を積み上げていくことで質の高い視覚障害者向けオンラインイベントが波及すれば幸いです。

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viwa 谷田 光一

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